簡単に鉄道模型車両を作成する方法についてご紹介します。
出来るだけ少ない操作で効果的なモデルが作成できるよう、シンプルに形を作っていく方法を取っていきます。
鉄道車両の作成にあたって最初に手がけるのは、なんといっても先頭部分です。先頭部分は鉄道車両の顔であり、ここが格好良く作れると後の作業もスムーズに進みます。
今回は昭和初期に世界を席巻した「流線型ムーブメント」の流れを汲んだ鉄道車両の車体を作っていきます。
先ずは先頭形状を大まかな箱型で組み、形状のおおまかな目安をつかみます。
箱は[基本図形]から直方体を選択してXYZ方向の距離を調整して作成します。(図1)
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図1. 電車先頭部基準箱型の作成 |
この時点では単なる箱ですが、先頭形状を構成するための必要な分割線を[ナイフ]で入れておきます。
上で作成した先頭形状作成用の基準箱を元に、[選択]で削除すべき面を選択して削除します。(図2)
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図2. 電車先頭部基準箱型の編集 |
このように、形状を削る部分のポリゴンを削除し、必要な場合は[面の生成]を使って必要な面を貼っていきます。
また、鉄道車両のように左右対称の形状を作る場合はどちらか片面を作成し、ミラーリング機能を利用してもう半分を自動的に生成します。このミラーリングに対応するために上の形状データの片側ポリゴンを選択し、それらを削除します。(図3)
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図3. 電車先頭部基準箱型の編集(左半分を削除) |
今までは箱型だった電車の先頭部基準形状をここから一気に流線型に近づけます。そのためには、箱型基準形状を削り、斜め面による基準形状を作成していきます。
具体的にはここでも不要な面を[選択]で個別に選択し、[面の生成]で必要な面を設定していきます。この時ポリゴンとともに必要な座標点を削除しないように、面の削除の順番を慎重に選びながら作業を進める必要があります。(図4)
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図4. 電車先頭部基準箱型から不要な面を削除し、流線型基準形状を作成する |
ここまできて電車の先頭形状がおぼろげながら見えてきました。しかし電車はこんなに角ばった形状はしていません。次は角ばった形状を丸めて具体的な電車先頭部形状を作成していきます。
先頭部形状に曲面を手っ取り早く当てるためには、これにも[基本図形]を利用します。曲面を設定したい部分に球体の一部を適用するのです。
具体的には[基本図形]で球体を選択し、屋根の中心線状の先頭部分の中心点に球体の中心を設定し配置します。分割数はU方向16、V方向8とします。この際球体は別オブジェクトになるように生成すると後の選択作業が少し楽になります。(図5)
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図5. 先頭基準形状に球体を配置する |
その後球体のポリゴンを[選択]で選択し、前縁部分の8分の1を残して削除します。次に残った部分の球形を[拡大]を選択してXYZ軸方向にそれぞれ縮尺を変更し、屋根に沿った形で曲面が展開するように形を整えます。(図6)
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図6. 先頭基準形状にそって球形を縮尺変形させる |
さらに前面下部の形状も屋根上の形状に沿った形で円柱状になるよう整形させます。これも先ほどの方法と同じく、[基本図形]を選択して形状を配置しますが、今度は円柱型を選択します。U方向分割数は16としますがV方向は2のままでOKです。(図7)
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図7. 先頭形状に円柱形を配置する。 |
これも先頭基準形状に当てはまる4分の1部分を残して他の部分は削除します。
そして先程と同じく[拡大]を選択し、各辺に合致するよう円柱形を拡大縮小調整して先頭基準形状に合うようにします。すると以下の様な形になります。(図8)
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図8. 円柱形の拡大変更による先頭前面形状のフィッティング |
最後に、再び先頭部の上側に注目して球形の断面のうち屋根にかかる部分の辺を選択します。
その後[面張り]を選択して選択した辺をZ軸マイナス方向に引っ張り、屋根部分のポリゴンを形成します。
さらに前頭部の球形と前面部の円柱の間に[面の生成]を使って間の部分にポリゴンを貼っておきます。
ここまで終われば鉄道車両の先頭形状が明らかになります。この時先に作った球形断面と円柱断面及びつなぎあわせたポリゴンを最初に作った先頭基準形状とは別オブジェクトにしておきます。
ここで形成した先頭形状に対してオブジェクトパネル上の[ミラーリング > 左右分離鏡面]を選択します。すると残り半分の形状が自動整形され、左右対称の形状になります。(図9)
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図9. ミラーリングで左半分を復活させた先頭形状 |
ここからは先頭形状に窓を開けていきます。
昭和13年代に流行した「流線型車両」では正面が曲面となったラウンドシェイプに4枚窓を配置するというスタイルがトレンドでした。その窓配置を先ほど作成した先頭形状から作り出していきます。と言っても実行する作業は正面窓のバランスを考えて中央の2つの窓を大きめに、その横の窓を小さめにデザインするだけです。そのためには現状で作成された先頭形状の曲面分割線を追加および変更し、それらしい窓が出来るように配置を変更するだけでOKです。
具体的には新しい分割線を[ナイフ]で適宜分割線を追加します。それらを[選択]で座標点を縦方向にまとめて選択し、これらの分割線を合わせて[移動]で適切な位置に移動します。その結果、先頭形状の分割線が図のように変化します。(図10)
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図10. 先頭形状への分割線の追加と窓配置に合わせた分割線の移動 |
これで窓となるべき場所が確定しました。ついでに乗務員が乗り降りする扉も分割線を入れて作ります。これらの窓や扉に当たるポリゴンを選択して、[メニュー > 選択部処理 > 面を押し出す]を選択し面を車内方向(マイナス方向)に押し出します。(図11)
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図11. [面を押し出す]で窓と乗務員扉を凹ませる |
さらに車体の内側を作り込んで一気に先頭形状を確定させます。そのために窓まわりのポリゴンを除いた先頭形状を[選択]で選択し、[メニュー > 選択部処理 > コピー] を選択して先頭形状を別オブジェクトとして複製します。
その後複製した先頭形状を[メニュー > 選択部処理 > 面の反転]を選択して面方向を反転します。これで選択した先頭形状は車内側を向きます。そして選択状態を維持したまま[拡大]を選択して先頭形状の中心で壁の厚さ分だけ縮小をかけます。(図12)
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図12. 先頭形状の内側の形成 |
これで先頭形状の表と裏で厚みが設定できるようになりました。表と裏をつなぐポリゴンを[面の生成]でつないでいくと先頭形状の窓枠と乗務員扉枠が形成されます。(図13)
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図13. 窓枠および乗務員扉枠を設定した先頭形状 |
さらに、ここで運転席の正面窓枠および乗務員扉の形成準備も行っておきます。
そのためにまず窓枠部分に別オブジェクトとして1枚ずつポリゴンを貼り込みます。
削除した窓枠用ポリゴンは元々2枚に分割されていましたが、ここでは実際の窓を作成するため、あえて1枚ポリゴンから作成することを考えます。ここまでの作業を行った結果、先頭形状は次の図のようになります。(図14)
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図14. 窓および乗務員扉作成用の仮ポリゴンを設定する |
この設定されたポリゴンに対して、窓枠部分と窓部分を切り分けるため[ナイフ]を選択して枠部分の分割線を入れます。入れ終わったら窓になる部分(内側を見通せる部分)のポリゴンを削除します。(図15)
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図15. 窓ポリゴンに分割線を入れて窓枠を残す |
残った窓枠は[選択]で選択し、[メニュー > 選択部処理 > 面を押し出す]を選択し、窓枠部分を押し出して厚みをつけていきます。最終的には図のような窓枠が出来上がります。(図16)
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図16. 厚みを付けて完成した先頭形状の窓枠 |
先頭部分の形状や窓枠が出来てかなり鉄道車両らしい外観が見えてきました。しかし先頭車両に欠かせないものがあります。それは前照灯すなわちヘッドライトです。
ヘッドライトの作成も先頭形状の時と同じように、[基本図形]の組み合わせで進めていきます。今回利用する基本図形は「球」と「リング」です。
モデリングの前に前照灯のデザインについての話を少しだけさせて頂きます。
日本で最初に流線型が流行した当時、前照灯はまだ車体の中に組み込まれることはなく、設置台枠を組んで車体の外側に置いていました。しかし流線型となるとそれでは風の影響をもろに受けてしまいます。そこで前照灯を半分車体に埋め込み、まるで砲弾を逆方向に埋め込んだようなケースを屋根の上に設置しました。この「砲弾型前照灯」は当時の流線型デザインに無くてはならない物だったのです。
作例ではこの砲弾型を球形を変形して作ることにします。
それでは[基本図形]から球形を選択して、中心点を先頭形状の屋根の上に持って行きます。この時前照灯カバー部分を構成するリング形状も同時に作成しておきます。(図17)
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図17. 前照灯を構成する基本図形(球形+リング)の配置 |
この球は2つに分割します。一方は前照灯のレンズとして使い、もう一方は前照灯後部の砲弾型ケースにします。それぞれ[拡大]をかけて変形させます。(図18)
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図18. 球形を中央で分割してそれぞれ縮尺変形をかける |
最後に前照灯ケースとして設定したリングの大きさを調整して組み合わせると、前照灯の形が出来上がります。(図19)
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図19. 前照灯の完成 |
これを先頭形状に配置すると、前照灯は完成です。(図20)
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図20. 前照灯の先頭形状への配置 |
先頭部分ができたら、続けて車体のモデリングを行います。車体は先頭形状を延長して作成します。車体断面は扉部分や窓部分に対称性が有るため、単純コピーアンドペーストや場合によっては鏡面コピー等で簡単に車体部位を増設して構築していくことが出来ます。
そのため今までの先頭形状作成作業よりも作業を簡単に進めることが出来ます。
それでは早速車体の作成を進めていきましょう。
車体の作成は先頭形状の乗務員扉部にある車体断面をコピーすることで簡単に作成できます。まず車体断面をコピーして乗務員室の後にある窓(客用扉を引き込んで収納する部分のため「戸袋窓」と呼びます)を作成します。
まずは乗務員扉から後の断面部分を[投縄]を選択して線で囲んで選択し、コピー&ペーストで別オブジェクトとします。そしてこのオブジェクトを戸袋窓に当たる幅分移動を行います。オブジェクトを全選択します。具体的には、
のいずれかを実行し、選択されたら[移動]を選択してオブジェクトを移動します。こうして戸袋窓部分にあたるスペースを確保して断面を配置します。(図21)
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図21. 車体断面のコピー(1) |
このやり方で続けて客用扉と側面窓分のスペースを確保して車体断面を配置します。それぞれ戸袋および窓柱分の幅に車体断面の長さを調整します。(図22)
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図22. 車体断面のコピー(2) |
車体断面を配置したら断面感のポリゴンを張って車体を構築していきます。側面窓の部分は断面窓柱とともに車体側面部分も選択肢コピーしていきます。下図では側面窓部分を6回コピーした所です。この時運転台を反対側にも反転コピーしておきます。(図23)
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図23. 車体断面のコピーと車体側板ポリゴンの展開 |
最終的に側窓が9つで流線型の両運転台を備えた自由形の私鉄風電車の車体が完成します。(図24)
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図24. 完成した電車の車体 |
車体の仕上げは窓枠の作成です。まず戸袋窓の窓枠を作成します。[面の生成]を選択して戸袋窓部分に1枚の4角ポリゴンを作成します。次に[ナイフ]で窓桟(まどさん)部分を切り分けます。(図25)
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図25. 戸袋部分の窓ポリゴンを張り、ナイフで窓桟部分を切り分ける |
その後、窓ガラス部分のポリゴンを削除し、残った窓桟部分を選択状態にしてから[メニュー > 選択部処理 > 面を押し出す]を選択し厚み付をします。窓桟が完成したらもう一方の先頭部の戸袋窓にもそのままコピーして移植します。(図26)
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図26. 戸袋窓の完成と配置 |
次は客用扉です。こちらも戸袋窓と同じやり方で作成します。まず客用扉部分に[面の生成]を選択して1枚の四角ポリゴンを作成します。次に[ナイフ]で客用扉の窓や幕板部分を切り分けます。(図27)
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図27. 客用扉部分に1枚ポリゴンを張り、ナイフで窓部分等を切り分ける |
その後、窓部分のポリゴンは削除し、残った客用扉全体を選択状態にしてから[メニュー > 選択部処理 > 面を押し出す]を選択し厚み付をします。
最後に幕板部分のポリゴン2枚を選択し、これも[メニュー > 選択部処理 > 面を押し出す]を選択し今度は凹みを付けます。客用扉が完成したらもう一方の客用扉にコピーして配置します。(図28)
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図28. 客用扉の完成と配置 |
同じやり方で今度は車体中央部の連続窓の窓枠を作成していきます。作成方法は戸袋窓と同じですが、連続窓部分は二段昇降窓(窓が2つに分かれて上げ下げできる仕組みになっている)となっているため、上段と下段で段差をつけてやると実物らしくなります。これも1つ窓枠が完成したら残り8つの窓にコピーして配置すればOKです。(図29)
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図29. 連続窓の窓枠の完成と配置 |
最後に車体の塗り分け線を決めて車体全体を[ナイフ]でカットし、車体の上下で異なる色を設定してやれば昭和初期の私鉄特急電車の雰囲気を持った車体に仕上がります。(図30)
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図30. 車体を上下にカットし、異なる色を設定する |
ここまでで電車の車体のおおまかな形を作り上げることが出来ました。
以下ではよりリアルな電車車体に仕上げていく例を示します。
下図では屋根上の器具を設置しています。電車の屋根上には換気用のベンチレータや屋根上点検用のランボードが設置されていますので、これらを作りこめばリアルさが増します。(図31)
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図31. 鉄道車両・車体部分のディテールアップ例 |
鉄道車両模型における車体制作では、先頭形状の完成が作業の7割を占めています。とにかく先頭形状をいかに実物らしくモデリングするかが重要なのです。 しかし電車における鉄道車両モデリングではその他にも様々なパーツが存在します。中でも大きな比重を占めるのは台車等の床下機器と、パンタグラフに代表される屋根上機器の制作です。
しかしこれらのパーツを配置すると鉄道車両としては大きく見栄えがします。今回の作例のように自由形の鉄道車両でも、これらのパーツを要所に配置すると、途端にどこかに実在したかのような実在感を醸し出します。 最後に筆者の持つディテールアップパーツを装着した今回の車体作例画像をご覧いただきながら、作例紹介を終わらせて頂きます。(図32)
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図32. パンタグラフ及び床下機器を装着した後の車体作例 |
※図31の時点のモデルがサンプルモデル内にtrain.mqoとして収録されています。